椎間板ヘルニア

ルー博士!
うちに来る患者さんで「病院で以前椎間板ヘルニアと言われたことがある」と言う方がいらっしゃるんだけど、椎間板ヘルニアについて学びたいです!!

うん!!いい心がけだね!
専門学校や大学でも一応習うけどそこまで深くは学ばないから、何となく知ってる状態から論文を読んで知見を深めるようにしよう!
腰椎椎間板ヘルニア
Lumbar Disc Herniation
背景と目的
背景
腰痛(LBP)は人口の約80%が生涯に一度は経験する極めて頻度の高い疾患であり、その中でも「腰椎椎間板ヘルニア(LDH)」は最も主要な原因病態の一つです。
目的
近年急速に進歩した「分子生物学的・遺伝学的要因」「新たな病態機序」「最新の画像診断」「保存療法(各種注射・理学療法・鍼灸を含む補完療法)」「低侵襲内視鏡手術」に関するエビデンスを網羅し、LDHマネジメントの最前線を整理・提示することを目的としています。
病態と発生機序(最新知見)
椎間板の生化学的・組織学的変化
正常構造
・髄核(主にII型コラーゲン)
椎間板の中心部で水分保持能とプロテオグリカン(PG)が豊富
・線維輪(主にI型コラーゲン同心円状構造)
髄核を取り囲むように周囲を強固な線維で囲んでいる
変性プロセス
異化因子の亢進によって【線維輪の破綻】と【髄核脱出】
〜原因〜
・髄核の水分保持能低下
・I型コラーゲン比率の増加
・細胞外マトリックスの分解
・アポトーシスやMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)など

椎間板ヘルニアは椎間板の中の髄核が線維輪を突き破って飛び出したものを言うんだね!
発症に関わる因子
遺伝的要因
椎間板ヘルニアの発症には約75%の遺伝的関与が報告されており、
・構造タンパク
・分解酵素
・ビタミンD受容体遺伝子多型 などが関連
アクアポリン(水チャネル)
摘出髄核の研究において、アクアポリン-1(AQP1)の発現が術前MRIのT2信号強度と直線的に相関することが判明し、脱水変性機序への関与が示唆されています。
軸圧過負荷(デスクワーク・座位生活)
変性を伴わなくても、「静的な過負荷(静坐位の持続)」が椎間板後方へのヘルニアリスクを顕著に高めることが実証されています(若年層の座位主体の生活習慣がリスク)

若い人の長時間座位はヘルニアのリスクになってしまうんだね💦
疼痛・神経根症状の発生メカニズム
物理的圧迫だけでなく、以下の化学的・環境的要因が複合して神経痛を引き起こします。
炎症反応(免疫反応)
髄核は本来、免疫隔離された組織(無血管)
髄核が硬膜外腔へ脱出 → 生体が異物と感知 → 炎症性サイトカインが大量に産生
結果:血管透過性亢進、激しい神経痛の発症
〜炎症性サイトカイン〜
・COX-2
・FSTL1
・TNF-αなど
Propionibacterium acnes(アクネ菌)感染仮説
坐骨神経痛患者の椎間板組織からP. acnesなどの嫌気性菌が高頻度に検出され、これが局所炎症や椎体終板の浮腫(Modic Type 1変化)に関与している可能性が注目されている(※関与の程度には議論あり)
局所の酸性化
変性椎間板内は代謝産物の蓄積によりpHが約1.0低下(酸性化)
これが酸感受性イオンチャネル(ASIC)を介して細胞死を早め、痛覚過敏を増悪させる
臨床症状と診断
主症状
障害神経根の支配領域に沿った【神経根性疼痛(放散痛)】【感覚異常】【筋力低下】
〜座位で悪化〜
座位姿勢は臥位に比べ椎間板内圧を約40%上昇させるため、座位で下肢痛・腰痛が増悪するのが典型
〜脊柱管狭窄症(LSS)との鑑別〜
前屈や座位で「痛みが軽快」する場合はLSSを疑う。
前屈位は椎間板圧を100〜400%上昇させるため、ヘルニアでは通常増悪する
ただし外側型ヘルニアなどの一部病態や、合併例では姿勢による反応が異なる場合もあるため総合的な判断が必要である。

ヘルニアは脊柱管狭窄症との鑑別がとても大切だよ!!
しっかり見極めようね!
理学検査(NASSガイドライン)
〜ゴールドスタンダード〜
【徒手筋力検査(MMT)】【感覚検査】【仰臥位SLRテスト(およびクロスSLR)】
「SLR陽性」に加え、「支配領域の疼痛・感覚障害・反射低下・筋力低下」のうち
3つ以上を満たせば臨床診断の妥当性が極めて高いとされます。
馬尾症候群(CES)の危険因子
糖尿病、急性発症、L3-L4高位、遊離型(Sequestration)、上外側偏位、広範な脊柱管占拠など。
これらリスク因子が複数ある場合は麻痺の進行に厳重な警戒が必要
画像検査
〜MRI〜
確定診断のゴールドスタンダード(診断精度97%)
ただし無症候性所見も多いため、発症6週未満で運動麻痺等のレッドフラッグがなければルーチンの早期撮影は推奨されません。
自然吸収(Spontaneous Resorption)
論文内でも言及されている通り、ヘルニア塊の約66%は自然吸収・退縮するというエビデンスが示されている
治療法(保存療法と手術療法)
保存療法(Non-operative)【第一選択】
多面的アプローチ
抗炎症薬、患者教育、運動療法・理学療法を組み合わせる
理学療法
コア(体幹)強化・関節可動性運動は有用。
早期に理学療法を導入した群では長期的なオピオイド鎮痛薬の使用量が有意に減少したと報告がある
鍼灸・統合医療(Non-traditional Modalities)
「鍼治療(Acupuncture)、漢方サプリメント、蜂毒薬鍼、脊椎マニピュレーション」などを組み合わせた統合的保存療法の5年追跡研究(Shin et al., 2016)を引用・評価しています
〜結果〜
VAS(疼痛)、ODI(障害指数)、SF-36(QOL)において長期的な幅広い改善が認められました
〜課題・注意点〜
約54%の患者がその後5年間のうちに腰痛や下肢痛の再発を経験して追加治療(保存・注射・手術)を要したこと、また対照群がないため「ヘルニアの自然吸収(約66%)」やプラセボ効果との厳密な切り分けについてはさらなる検証が必要と考察
硬膜外ステロイド注射(CSI) / 新規注入療法
短期的な下肢痛緩和には有効ですが、手術回避率や長期機能の改善には限界があります。側臥位での注入が腹臥位より成績良好との報告もあります
近年ではTNF-α阻害薬(エタネルセプト等)の局所投与や、PRP(多血小板血漿)・間葉系幹細胞(MSC)を用いた再生医療的アプローチの研究が進められています

薬物療法や注射などは鍼灸師にはできないけど、【体幹の強化】や【関節可動域の獲得】【鍼治療】など鍼灸院でもできる事はありそうだね!
手術療法(Operative)
適応と効果
進行性の運動麻痺、馬尾症候群、および難治性激痛が適応。
手術は「6週〜1年時点での早期の下肢痛改善」には非常に優れるが、2〜5年の中長期予後では保存療法群と大差がなくなる
低侵襲内視鏡手術(PELD / FELD)
経椎間孔(Transforaminal)や経椎弓間(Interlaminar)からの全内視鏡下ヘルニア摘出術が普及
筋肉や骨の侵襲が少なく出血量や入院期間を大幅に短縮できる一方、再発率(5〜15%)や術者のラーニングカーブが課題として挙げられている
臨床家(鍼灸師・柔整師等)への要点まとめ
痛みの本質は「炎症と化学物質」
突出による物理的圧迫だけでなく、髄核漏出に伴うTNF-αやCOX-2などの劇的な化学炎症が主因
急性期は無理なアライメント矯正よりも、局所炎症の鎮静と安静肢位の指導が最優先となる
長時間の座位が最大の増悪因子
座位は椎間板圧を跳ね上げます。
「立っている方が楽」「座ると脚に激痛が走る」という問診所見はLDHを強く示唆し、患者への座位時間短縮指導が有効
自然退縮を念頭に置いた保存療法の価値
ヘルニアは生体免疫(マクロファージ等)により約6割以上が自然吸収される
鍼治療や理学療法は、この自然吸収・組織修復の期間を「強い痛みや過剰な薬剤使用を抑えながら安全に乗り切る」ための極めて価値の高い保存的手段として位置づけられる
筆者の総括
いつも臨床の現場では検査・鑑別を大切にしていますが、今回の論文はまさに「検査・鑑別」「日常生活指導」の大切さと痛感する物だったと思います。
私は腰痛の患者さんがいらした際には、問診の時間を長くとっています。
問診による日常生活で感じる痛みについてでも大凡椎間板か狭窄症かが見えてきます。
そこに皆さんもよく知るSLRテスト、ラセーグテスト、母趾の筋力チェックなどを通して答え合わせしていく感じです。
腰痛といっても椎間板、狭窄、分離症、圧迫骨折、椎間関節症、筋筋膜性腰痛、など色々なものがあり鑑別が狂うと治療の方向性がなかなか定りません。
しっかりと問診を取り、徒手検査行う。
レッドフラッグの可能性があれば医療機関に行くように患者さんに説明して施術情報提供書を作成する。
レッドフラッグでなさそうであれば自分に何ができるのか?
疼痛抑制 / 物理療法による消炎鎮痛 / 運動療法・機能改善 / 日常生活に対しての指導
・コア(体幹)強化・関節可動性運動は有用
・鍼治療がVAS(疼痛)、ODI(障害指数)、SF-36(QOL)において長期的な幅広い改善が認められた
・「静的な過負荷(静坐位の持続)」が椎間板後方へのヘルニアリスクを顕著に高めることが実証されています
本論文でも記載があるのでレッドフラグではない椎間板賞、椎間板ヘルニアに関しては鍼施術、運動指導、生活指導を自信を持って提供しています。
今回の論文
著者
Raj M. Amin, Nicholas S. Andrade, Brian J. Neuman(ジョンズ・ホプキンス大学 整形外科)
掲載誌
Current Reviews in Musculoskeletal Medicine
掲載年
2017年
免責事項
本記事は最新の研究論文(医学的文献)に基づいた情報提供を目的としており、特定の治療法や効果を保証するものではありません。特定の症状の診断や治療については、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。

